冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「あいつは、とんでもない相手に手を出しちまった。お前も知ってるように柊は時期に結婚する。その相手の女性はうちの取引先の社長の娘で……岡崎専務の息子の婚約者だったんだよ」

「えっ!?」

初めて健一の結婚相手のことを聞かされて絶句する。

岡崎専務は元の広報部部長で、安西部長の上司でもある。少しクセのある性格で一部では煙たがられているけれど、普段は穏やかな気質で話せばいい人だ。

取引先の社長の娘で岡崎専務の息子さんの婚約者だった人だなんて……それじゃ、健一が寝取ったってこと、だよね?

「会社は仕事だけできればその人間性までは問わない。けど、この件は別問題で岡崎専務もこの話を知って柊の出世は絶望的だ。悪いが俺もそんな男を主任に推すことはできないんだよ」

「それって、私は柊さんの後釜ってことですか?」

膝の上に置いた拳をぎゅっと握りしめる。力不足の私が主任になっても、きっと周りが認めてはくれない。

それなのに、私を主任に推薦するだなんて……どういうつもり?

安西部長に不安な視線を向けると、彼はすっと険しく目を細めた。

「それは違う。柊にはなくてお前にあるものがわかったからな。俺はお前が適任だと確信したから推薦を決めたんだ」

「私にはあるものって……なんですか?」

目を瞬かせていると、安西部長が前のめりになってじっと私を見つめた。
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