冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました
「別に寝込みを襲ったりしねぇよ」

「お、襲う!? ちょ、何考えてるんですか!」

セクハラまがいに茶化されるとサッと眠気が吹っ飛ぶ。そして私はそそくさと歯を磨いてパンパンと化粧水で肌を整えると、動揺する顔を隠してベッドにもぐりこんだ。

もう、安西部長の馬鹿。

しばらく布団にくるまっていると、彼がキーボードにカタカタと指を滑らせる音だけが聞こえきた。ずっとその音を聞いていると、再び眠気がやってきて私はウトウトと微睡み始めた。

あ、おやすみなさいって言うの忘れちゃったな……けど、もう身体が疲れて動かないよ。

――俺とお前は上司と部下、そうだろ?
――って、そう自分に言い聞かせてるのは、俺のほうかもな……。

完全に眠りの淵に落ちたとき、夢うつつの中でそんな安西部長の独り言が聞こえたような気がした。けれど、睡魔の誘惑に私は瞼を押し上げることはできなかった。
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