愛してると3回言って
「お疲れ様です!」


ひときわ通る声が耳に入る。

どうやら楠木さんが帰ってきたようだ。

少しだけ日焼けをしていて、以前よりも男らしくなっている……ように見えた。


「おう、お疲れ~。出張どうだったか?」


ぞろぞろと周りの人が楠木さんに集まっていく。

一気に人気者だ。


「いやあ、さすがに沖縄行って北海道行っては大変でした」

「美味いもん食えたか?」

「食べましたよ!出張だということを忘れそうになりましたね」


そう言って彼は沖縄と北海道のお土産を配り始めた。

律儀な人だ。

しかも結構な量買ってきているようで、恐らく全員に配る気であろう。

まあ、全社員数は50人くらいだし、何千人もいるわけじゃないから配れるとは思うけど。

わざわざ違う部署の人にも配るのか……ということはだ。

いつかは私のところまで来るというわけで。
心の準備をしていない。

今日帰ってくることはわかっていたけど、こんな急に話す機会が訪れるとは思っていなかった。

どうしよう?

なんて言って話す?

そう思考を巡らせている時だった。
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