愛してると3回言って
今度はきっと聞こえたよね?


「…………」


楠木さんはゆっくりと顔をうずめた。

表情が見えない。

反応も何も無いし。

何か嫌な思いをさせてしまっただろうか。

不安になり、そっと顔を覗き込むと彼は顔を真っ赤にさせていた。

それを見た私も、伝染したかのように自分自身の顔が赤くなるのを感じた。


「ごめん。聞こえていたのに何度も言わせて」

「え、聞こえていたんですか!?」

「うん……嬉しくて」


ふんわりと笑う彼。

その顔は本当に嬉しそうで、同じように私も笑っていた。


「これからよろしくお願いします」

「はい。こんな私ですが、よろしくお願いします」


この日、私と楠木さんは結婚を前提にお付き合いすることとなった。
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