愛してると3回言って
でもそれより前に状況が全く把握出来ていない。


「私、昨日のこと何も覚えてなくて……あの。何がどうなってこう、なったの……ですか?」


素直に覚えてないことを話すと、楠木さんは不意打ちを食らったかのように、固まった。

まさか、何かとんでもないことをやらかしていたのでは?不安は高まってゆくばかり。

昨日のことで覚えているといえば、職場から出るタイミングが一緒で、2人で話しながら駅に向かって歩いていると、ぐぅーっと私のお腹が鳴ってご飯に行く流れになった。

その後、どうなったんだっけ?

どんなに頭をひねっても当時の記憶が全く出てこない。


「もしかして……その、こんな格好ですし」


楠木さんの口からはまだ肯定も否定も出ていない。

淡い期待を胸に彼の言葉を待った。


「……責任を、取るよ」


でも私の淡い期待はいともあっさり砕かれたのだった。
< 9 / 62 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop