冷徹部長の溺愛の餌食になりました
「それに、よく思う人ばかりとは限らない。霧崎が仕事で評価された時、上司と付き合ってるからだとか言い出す人も出かねないからな」
「え……」
それって、もしかして……私のため?
本当は小宮山さんに知られたくないだけかもしれない。
だけど、ほんの少しでもその胸に私の存在があるとしたら、それだけで嬉しい。
その嬉しさを体で表すように、私は久我さんの腕にぎゅっと抱きつく。
「……くっつきすぎ。バカップルだと思われる」
「いいです。寧ろ思われたいです!」
スーツに隠れた硬い腕にしがみつくようにくっつきながら言い切る私に、久我さんは呆れながらも離すことはなく、「ははっ」と笑った。
彼にいとしさを抱く反面、自分のずるさを思い知らされる。
彼の中に自分の存在などカケラもないと知っていながら、責任から生まれた彼女という立場を盾にここにいる。
だけど優しい彼は、こうして応えてくれるから。
このままでいたい。
夢を見ていたいと、願ってしまう。