8月のミラージュ 【ママの手料理 番外編】
口を挟む余裕も無い位ぺらぺらとそう言ってきたチビに、俺は舌打ちをして言い返す。



「そう言うお前だってそのタピオカ無料で貰ってんじゃねぇか」



「仁さんからは、『紫苑ちゃんには、あの暑苦しい奴らと違ってお金は請求しないよ』って言われてるもん。だから飲み放題」



その返答を聞いた俺は、顔を歪ませて呟いた。



「あいつ、今度会ったら首の骨折る」



いやいやいや、と、彼女はタピオカを一気に吸い込んで呆れた様な顔を浮かべた。



「銀ちゃんは、店員さんなのにお店の商品食べてるじゃん。そっちの方が仁さんより駄目だと思うけど」



「俺はこの店の店員だ。この店の商品を俺が食べていいか駄目かは俺が決める」



待って、その考え絶対間違ってる…、と笑う紫苑。



彼女の考えに賛同するかの様に、



「最近、マカロンの売り上げと残った商品の品数が合わないって思ってたら犯人はお前か、全く…。何やってくれてるんだよ」



お客さんの会計を済ませた直後の湊が、目頭を指で押さえながらこちらに近付いてきた。



「上手いんだから仕方ねぇだろ」



「お、たまには嬉しい事言うじゃん。そうだ、今銀河が食べてる新作のアニマルマカロン、味はどう?」
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