泣いた、緋鬼



「――ウッ、グスっ……!」





いろんな人がすすり泣く声が聞こえて、私はゆっくりと目を覚ました。

正確には、意識が現実世界に帰ってきた、とでも言った方が正しいのだろうけれど。

この場にいる全員が黒い喪服に身を包み、顔を抑えて泣いている。





――お母さん、看護師さん、福院長……。





決して多くはないけれど、それでも確かに来てくれた人がいることにホッとする。

ずっと、病室で過ごしていると、生きているのか、死んでいるのか分からないのに近かったから。

辺りを少し見回して、希くんの姿を探す。

しかし、彼の目立つ身長も、整った顔も見当たらない。
< 144 / 170 >

この作品をシェア

pagetop