泣いた、緋鬼


――どうして、いないんだろう。





まさか、死んでしまった私にはもう興味は無いの?

嫌な不安が心を覆い尽くす。

目の前には長方形の木箱があって、ここに私の死体が眠っている。

さらに少し上を見上げると、微笑んでいる私の写真がデカデカと飾られていて、周りには花が添えられている。

それを見て、ああ、死んだんだなって感覚が今になってわいてくる。





――死んだあとは、天国に行くんじゃなかったっけ。






どうして、私は現世をさ迷っているんだろう。

私の死体が入った木箱を見下ろしながら、そんなことを考える。

考えても分からないことというのは、幾ら考えても一人じゃ答えを導き出せない。
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