敏腕社長は哀しき音色に恋をする 【番外編 完】
ー数週間後ー


仕事から帰宅して玄関を開けると、かすかにピアノの音が聴こえてきた。
邪魔をしないように、そっと廊下を進む。


僕はこの瞬間をいつも楽しみにしている。
今日はなんの曲を弾いているのか……


リビングに近づき、華の弾いている曲目に気づき、一瞬にして体が固まった。
背中に嫌な汗が流れる。
心拍数も急激に上がり、苦しくなってくる。

今すぐ華に駆け寄って、抱きしめ、本音を言葉で聞き出したくなった。

でも、ピアノの邪魔だけは絶対にしたくない。
だから、唇を噛み締めてぐっと我慢した。



ーショパン 〈別れの曲〉ー



弾き終えると、すぐさま華に駆け寄って抱きしめた。

「あっ、恭介さんおかえりなさ……っちょっと恭介さん、急にどうしたの?」

「華、華、何があったんだ?」

「えっ?何のこと?」

首をかしげる華に、さらに追いすがった。
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