【桃・中編・画】金魚の居る場所
同衾するの巻
それからの事はよく覚えていない。
気を失って座席に座り込む私を閉店間際まで待ってくれていた※※※※の従業員達が、仕方がないので私の居住区を探そうとしてくれた。気絶して、何の反応もない私に「すみません。すこし覗かせてください」と、謝り、鞄をあけた。
そして、和歌山県の住所しか出てこない身分証に、どうしたもんかと考えた彼らは、先ほど登録した「のりお」さんの連絡先のメモ内容が、携帯にあるのを確認の上で、※※※※からの電話で「のりお」さんに引き取って介護してくれる様に連絡した。たまたま「のりお」さんが、赤ワインで晩酌をしていなかった為に、お鉢がまわり、※※※※の従業員達は、良かった良かったと二人を見送った。

確かに私の身分証は全て和歌山県のモノだから、タクシーで送ることも出来ずに、明日も仕事のある「のりお」さんは、近くのビジネスホテルに私を宿泊させる事にした。

酔い潰れて呼吸が詰まりかけていたので、「役得?」とばかりにホテルの一室のベットに寝かした寝苦しそうな私の衣類を弛める。アルコールに酔った吐息が、艶かしいなと想いながらも「婚約者」が心配しているだろうな?と「可哀想に」と想う「のりお」さんだった。

決して、魅力がない訳ではない「まき」に「のりお」は、操は※※※※の金魚達に捧げていますからといって、明日も早くから仕事があるので、狭い中に同衾する事にした。悶々としてなかなか寝付けない「のりお」さんは「まき」がお花畑で、にこぱーとしている眠り姿を見て、調子狂っちゃうんだけどね。 と、一人ぼやいた。本当に※※※※以外で会う気はなく、次に来る日程やうさ話を聞いてもらいたかっただけだ。「のりお」は、寝言で「ゆづおさん」と何度か吐く「まき」の吐息に、どきどきしながら、狭い上布団を横にかけ、二人にお布団が掛かる様にして「ざまねーな」とぼやく。

携帯の待ち受けは羽生のエキシビジョンの画像が、登録されており、いいじゃんと、こぼれ伝うソレに「のりお」は自分でも驚いてた。「ゆづお」か「ゆづる」では無いんだ。もし相手が「ゆづる」なら、僕も想うところがあるんだが。と「のりお」はベットから颯爽とでて、トイレを済ます。そのまま、火照った頬を冷やす為に、こぼれ伝ったソレに腫れた両目をもとに戻す為に、何度も何度も顔を洗い続けた。頭が冷えた頃、寒くなってきたので、またそっと同衾する。「のりお」の両目はもう腫れてなかった。

一方「まき」は薬を飲んでいないので、沢山睡眠をとる事が出来ずに変な夢を破るかの様に目を覚ます。その変な夢は、「ゆづお」と仲良く部屋で、除湿された空気を味わっていたら、らんちゅう?ににらまれ、和金がアソコから口をくぐって泳いでゆくというワイルドにセクシーな夢を見てしまったのだ。

それでぼんやり微睡んでいたら、誰かの男性の背中にコツンと当たった。ぱにっくする「まき」和金のエロさは夢の筈と、下着が汚れている事に恥じ入りながら、なんで単身赴任中の「まき」が誰かと同衾している(汗)のかと、ぱにっくる。背中を向けて居るから誰だか判らないが、「まき」の衣類が全身緩んでいた(介護の基礎という知識は「まき」にはない(笑))
どきどきして発汗しだす「まき」は声も出せずにぜーぜーはーはーしていた。
その熱い呼吸を浴びる背中の「のりお」が浅い眠りから目覚める。そして「まき」を見たら、全身で、朱金の金魚みたいに、赤面してるので、ぼんやりと考えた。そして※※※※から連絡が有り、送る為に出向くも、連絡先が和歌山県なので、男の一人部屋に通すよりもホテルが良いだろうと判断した事を思い出した。
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