real face
ちょっと!ケバ過ぎ?
化粧は私にとって、戦闘服と同じなのに!!
会社という戦場で闘うための、必須アイテムよ。
……私、なにと闘っているんだったっけ?
考え込んでいるうちに、いつの間にか向かい側から隣に移動してきていた、佐伯主任。

「あーあ、ボロボロだな。……ん?お前って、歳はいくつなんだ?」

顔を覗きこまれ、思わず仰け反りながら答える。

「23歳になりました…………今日」

最後の"今日"は遠慮気味に、聞こえないように言ったので、ほぼ口パク状態になった。
今日が誕生日です、なんて。
アピールしてるようで嫌だ。

「23歳…!?おい、そんなに若かったのか。態度でかいくせに」

はあ!? さっきから重ね重ね失礼ね!
23歳って言っても、大学卒業したてじゃないわよ。私は高卒で就職したから5年のキャリアがある、一応。

それに4月1日生まれって、早生まれと同じ扱いだから、同じ学年の中では一番最後に誕生日を迎えることになる。
この日が誕生日なんて、嬉しいと思ったことあんまり無いような気がする。
しかも、誕生日が失恋記念日になっちゃうなんて、本当に最悪。

「ふーんだっ!どうせ私は態度デカいし、ケバいし、勘違い野郎だし……。顔だって悪い女ですよ~だっっ!!」

今度はわざと主任に近づいて顔を突きだし、目をギュッと瞑り、口を『イーッ』と横に広げるという"変顔"を披露した。
どうせ最悪な状況だし、怖いもの知らずになってた私。
佐伯主任は突然の"変顔"に、ブッと思い切り吹き出した。
その不意打ちの笑顔が、あどけなくて一瞬で目を奪われてしまった。
社内でもイケメンと名高い佐伯主任のレアな笑顔に、思わずつられて私まで普通に笑ってしまう。

「あははははは!」

その笑い声も長くは続かなかった。
笑顔から一転、真顔になった佐伯主任が……。

私に急接近してきた。

ビックリして不意に目を閉じてしまうと、体を壁に押し付けられ。
唇に生温かい感触。
だんだんと熱を帯びてくる唇に、やっと意識が追い付いてきた。

「んっ……………!?」

わ、わわわわ私、いま……。
佐伯主任とキス、しちゃってる…………。
これって、もしかして。
私の、ファースト・キス?
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