real face
え、ちょっと!
なんでそんなこと、迫田さんに話してるの!?
佐伯主任ったらもう……。

「は、はい。そうなんですけど、他の人には黙っててもらえると有難いです」

「ふーん、否定しないんだね。まだ誰にも言ってないから安心してよ」

「本当ですか?でも迫田さんって口が軽かったりしませんか?」

「ど、どうして?(実は宮本課長には話してしまったけど、勘づかれてるとか)」

「あの販促イベントのとき、私がナチュラルメイクだったってことまで報告したらしいじゃないですか!そんなの仕事には関係ないと思いますが」

佐伯主任ったら、まるで見ていたかのように言ってたんだから!

「俺が?先輩には言ってないよ。そんな重要情報を易々と教えるわけないだろ」

……どういうこと?

「それよりもさ、蘭さんは知らないのかな、あの噂」

「噂って、なんのことですか」

「あ、いや、知らないのなら知らない方がいいのかも」

「ちょっと、気になるじゃないですか。言いかけてやめるなんて迫田さんらしくないですよ。早く教えてください!」

こんなところで油売ってる場合じゃない。
その軽い口を早く滑らせて!

「佐伯先輩、シャ食で人目はばからずに宮本課長に迫っていたらしいよ」

「迫っていたって……どういうことですか」

「つまりその……カラダの関係?」

…………………は?

「……くだらない」

開いた口が塞がらないとはこの事だ。
真剣に聞いた私がバカだった。

「迫田さんて口が軽いだけじゃなかったんですね。失礼します」

「あ、え、ちょっと待って、蘭さん……」

もう、無視無視。

イベント以来の再会だったけど、もう会わなくていいかも。
経理部の入口まで来たときに、ちょうど中から出てくる人と目があった。

「……まひろ?久し振り、だな」

な、なぜ……?
どうしてこんなところで……。

「お久し振り、です………」

これは偶然?
悪夢の再会………………。
今、私の目の前に立っているこの人は、私の父親だった。

「まひろさん、土曜日はお友達とおくつろぎのところにお邪魔しました」

父の後ろから現れたのは、霧島さん。

「霧島さん、こんにちは。その節はどうも」

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