real face
第8話

偶然の再会

──6月6日。

佐伯主任と会えない週末をやり過ごして、迎えた月曜日。

今日もいつもと変わらずスマートかつ迅速に仕事を片付けていく、主任。
私も彼の邪魔にならないように、自分のやるべき仕事をこなしていく。
かなり集中してやらないと追い付かないから仕事中は必死。
以前のように、いろんな人から仕事を頼まれたりしなくなったから、集中力が途切れることもないし。

あれ、そう言えばいつからなんだろう?
前は当たり前のようにやってたことなのに、いつの間にか忘れ去っていた。

佐伯主任とコンビを組んだばかりの頃、私が他の人からの依頼を引き受けていることで言い争いになったことがあるのを思い出す。
あの時の主任、私に『他の奴からの依頼は受けるな』なんて言って不機嫌だったよね。
私は私で『今までやってきたのを急に断るなんてできません』って言い返してた。

まだ2ヶ月くらいしか経ってないのに、ずいぶん前のことみたい。


さて、一段落ついたし、経理部に行ってこよう。

「佐伯主任、経理部に行きますけど何か用事なかったですか?」

「じゃあ、ついでにコレを広報部に届け………いや、やっぱりいい。コレは後で俺が届けるから」

「え、経理と広報近いからいいですよ。私が届け……」

「いや、大丈夫だ。もう一回確認しないといけなかったから。蘭さんは、広報にはなるべく近付かないで帰ってこい。さ、行った行った」

「分かりました、行ってきます……」

どうしたんだろ。
あの佐伯主任が確認を怠るなんてあり得ない。
もしかして、広報の上村課長から呼ばれているのかな。
気に入られているみたいだもんね。

でもそれなら普通、最初から人に頼もうとはしないはずだけどな。
佐伯主任は上村課長のことが苦手なのかも。
だけど主任は仕事に私情を挟んだりはしないはずだもんね。

ま、気にしない気にしない。
なつみんに会えるといいな。



「あ、蘭さん!久し振りだね」

「迫田さん、お疲れさまです」

経理部の手前で、広報の迫田さんに声を掛けられた。
シャイセクのリラックススペースで休憩中だったようだ。

「ねえ、佐伯先輩から聞いたんだけど。蘭さんと佐伯先輩って、付き合ってるって本当?」

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