real face
まあ、その機密文書自体が怪しいと俺は睨んでるけど。

「言えないのは理由があるんだろう。それも含めて自分で真実を確かめろ。俺が言えるのはそれだけだ」

まひろ、もう子供じゃないんだ。
お前が頼っていいのは俺じゃない。

BBQの道具を無事に返却して、秘境渓谷へと急ぐ。
離れている間に何か起こっているような気がしてならない。
早く、菜津美に会って無事を確かめないと……。

往復約1時間のドライブを終えて、戻ってきた秘境渓谷。
車を降りると待ち構えていたように、霧島さんが駆け寄ってきた。

「たっ、大変です!あの……佐伯さんが、有田さんを連れてあの吊り橋を渡ってるのを見てしまって。私、どうしたらいいのか分からなくなって」

……なんだって!?
翔が、菜津美を?
目を離すなって頼んだけど、何故2人で吊り橋を……。
嫉妬の感情が胸に渦巻く。
駄目だ、冷静になるんだ、俺らしくもない。

「イチにぃ……。自分で真実を確かめろって言ったよね。私、佐伯主任にどうしても伝えないといけないことがある。だから、私行ってくるよ」

まひろが吊り橋の方へと向かって走り出した。
あの吊り橋は、まひろが小さいときに一緒に渡ろうとしたことがある。
怖がるまひろを連れて、俺が着いてるから大丈夫だよって。
だけど大丈夫じゃなかった。
揺れる橋の途中でギャン泣きして俺にしがみついてたな。
あれ以来、まひろは高所恐怖症になってしまったんだ。
俺のせいで……。

いかん!感傷に浸っている場合じゃない。
早く追いかけないと。

「うっ…………!」

背後で突然、霧島さんが呻いたかと思うと、その場にうずくまった。

「霧島さん、どうしたんですか!大丈夫ですか?」

駆け寄ると、顔が青ざめていた。
誰か、誰かいないのか!
修一は何処だ!?

「立てますか霧島さん。どこか座れるところは……」



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