real face
部長との電話で、最初は宮本課長と出張に行くつもりだったと聞いたが、課長はセミナーが入っているから今回は行けないらしい。
俺が行けるって事は、チャンスなのかもしれない。


──出張後。

3日間の出張を終えて木曜日の朝に出勤すると、待ち構えていたかのように蘭さんから声を掛けられた。
俺と蘭さんがコンビを組むことになったって?

「冗談だろ」

そんな事、一言も聞いていない。
当然のことながら、宮本課長を問い詰めるが『決定事項』だの『課長命令』だのと、バッサリ切り捨てられた。
一体何を考えているんだ、課長は。
しかし、決定事項だと言われれば仕方のない事だ。

俺とコンビを組むという事がどういうことなのか身体で解らせるしかないな。
もし俺の仕事に差し支えたり、邪魔になるようだったら、こっちからバッサリと切り捨ててやる……。
ただ、それだけだ。
その時には、課長にだって文句は言わせない。

課長からの指示で、RYUZAKI工房に電話をしたら、龍崎貴浩部長は『次の打ち合わせは蘭さんだけで』と言いやがった。

俺は、要らないってか?


──終業後。

部長との外出が思いの外、長引いてしまった。
会社に戻った時刻は、18:57。

「おう、お疲れ。結構遅かったな」

「課長、ただいま戻りました。部長と一緒だと予想外のことが起きるって出張で学びましたから、問題ありません。蘭さんは?」

「もうとっくに帰ったぞ。あいつは仕事の後も忙しいからなぁ」

俺が『直帰』と言ったのを真に受けたんだな。
"今日中に"って指示しておいた資料、どうなったんだ?
初日だから少し手伝ってやろうかと思えば、もう帰っただと。
明日は説教だな。
いくら俺が厳しいといっても、初日で切るつもりはない。
どんなに酷くても1週間は我慢してやると決めたんだ。
まあ、試用期間みたいなもの。

俺のデスクに書類が山積みにされている。
これって、もしかして。
俺が蘭さんに指示していたやつか?
なんでこんなに?
とりあえず、パラパラと捲ってみる。

………嘘だろ!?

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