real face
──終業後。

『もしもし、まひろん?もうすぐ終わるよ。そっちは?』

「私もいま終わったとこ。課長は出先から直接お店に行くらしいから、ロビーで待ち合わせようか」

『わかった。じゃ10分後にね!』

結局、あれからバタバタしてたし、イチにぃと話す暇なかったな。
まぁこれから会うんだし、問題ないでしょ。


──19:30。

「お疲れさまです宮本課長!」

「2人とも、お疲れさん。よかった先に帰られてたらどうしようかと思った」

「まさか、まだ私たちも来たばかりですよ。ね、なつみん。それに課長の奢りだし!」

「上司として、部下に払わせるなんて格好悪いからな。でも今日は上下関係は置いとこう」

「あ、宮本課長、飲み物はビールにします?」

「ありがとう有田さん。さっき店員さんに頼んできたから」

そう言ったそばから店員さんがやって来た。

「烏龍茶、お待たせしました!」

「課長、烏龍茶って!!似合わないですよ。酒豪のくせに」

受け取ってゴクゴクと飲み干してしまってから、息を吐く課長。

「プハー!喉が乾いてたから、上手い。酒を飲む前に話しておきたいことがあるんだ」

上下関係は置いといてとか言いながら、真面目な話?
だけど上司である"宮本課長"とは違った雰囲気を感じさせる、イチにぃ。

「まひろ」

「ちょ、ちょっと、課長!?」

なつみんと一緒なのに!
なつみんを見ると、私を名前で呼んだイチにぃを驚いたように見つめていた。

ああ、何がしたいのイチにぃ。
なつみん誤解してるんじゃ……。

「有田さんに誤解されたままじゃ、俺が耐えられそうにないから」

そう言うと、今度はなつみんと向き合って話し始めた。


「有田さん、もしかして俺とまひろが特別な関係とか、思ってる?」

「実はもしかしたら、2人は付き合っているんじゃないかと、思いましたけど。やっぱりそうなんですか?」

「ほら、やっぱり誤解してる。俺たち付き合ってる訳じゃないんだ。なぁ、まひろ」

「うん、なつみんが思ってるような関係じゃないよ。イチにぃと私はね……」

「待ってまひろ。それは俺の口から言わせて欲しい」

「解った。………任せる」

こんなに真剣なイチにぃ、見たことないかも。


「俺とまひろは、いとこ同士なんだ」

「えっ!?いとこ……ですか?」

「ごめん、なつみん。今まで黙ってて」


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