real face
「ファーストキス!?」

わっ!!しまった!!

「アレが初めてだったのか!?お前いくつだよ、23歳だっけ?今時、23にもなってファーストキスとは。可哀想な奴だな……」

「すみません、私もうすぐ24歳になるというのに、未経験で」

「あっえっ!?有田さん、いや、菜津美……さん?あの、えーと」

もう、イチにぃのバカ。

「イチにぃ責任重大だよ、なつみんのファーストキス。可哀想なんて言っちゃダメだよ!」

「ばっ、バカ言うな!可哀想なのはお前だけだ。それにしても、確かめたのかアイツに。どういうつもりなのかって」

「聞こうとしたけど、無駄だった。だって覚えてなかったもの。あの時のこと全く覚えていないの、佐伯主任」

「そっかやっぱりな。翔の本音スイッチは見極めが難しくなってるからな」

「本音スイッチ?」

「ああ。酒に酔ったり、何かの拍子に入ったりするんだ。翔の本音スイッチが。あの時がそうだったんだろうな。分かってたらいろいろ聞き出すんだったのにな!」

佐伯主任の本音スイッチ。
じゃああの時の佐伯主任は、素顔をさらけ出していたってこと?
ある意味、私も素顔をさらけ出していたんだけどね。
化粧という名の仮面が剥がれ落ちていたから……。

「そして、酔っ払ったときの本音スイッチは、あとで忘れられていることが多いんだ。俺はたまに翔から本音を引き出そうとするんだけど、最近はその本音スイッチをコントロールするのが難しくなってる」

「ずっと忘れられたまま、なのかな……」

「いや、よく分からないけど、何かのタイミングで思い出すことはあると思う。だからそんなに寂しそうな顔するな」

「べっ、別に!!寂しくなんかない」

「思い出してくれたらいいね、まひろん。まずは仕事で認められてから、それからどんどん距離を縮めていくのも有りかもよ。頑張れ、まひろん!」

「そうだな。良いこと言うなぁ菜津美。俺たちが応援してやろうか、なぁ菜津美」

「はい課長、喜んで!!」

「会社以外では、"課長"はやめないか?」

「あ、え、はい。一弥さん……」

あぁ、もう、勝手にして。



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