real face
「あ、そうだ忘れてた。吉田先生が、ケーキ美味かったって喜んでたよ姉貴。また食べたいって」

「あかりに手伝ってもらったからよね。あかり、また作らなきゃね~」

「翔さんも美味かったってさ」

「新、『ショウさん』って?」

「吉田先生の息子さん。超イケメンでカッコいいんだ!!俺、あんな兄貴が欲しかった!!」

「俺じゃダメなのか?」

「イチにぃは、兄貴っていうより……オジサンかな」

「おいおい!失礼だな!!まひろ、どういう教育してるんだ?」

「両親が離婚してると、こうなるのかしらね?」



お好み焼きを食べた後は、UNO大会。
持ち手が良かったのか、早々に上がって暇になったイチにぃと私。
ちょっとみんなと離れて、2人で少し話す。

「なぁ、まひろ。親父さんに会いたいと思う
か?」

「……会いたくないよ」

「即答だな」

なんで、そんなこと聞くの?
会いたいわけないじゃない。
私は昔、父のことが大好きだった。
だから父のようになりたいと思ったし、なれると思っていた。
父の後を継ぎたい、なんて夢だって持っていた。

だけど裏切ったんだ、私たち家族を。
そんな父に会いたくはない。

「そうか、了解。じゃ今回はやっぱ予定通りパターン1でいくよ。だけど、いつまでも回避できるわけじゃないからな。それだけは言っておく」

「なに?意味不明……」

「まだ不明でいいよ。とりあえずはな」

なんか、凄く嫌な予感がするんだけど。

「今日はなつみんの、お祝いなんだから!変なこと言わないで楽しもうよイチにぃ。ちょっとアンタたち、まだ終わらないの?」

UNOの後は、トランプしたり、ジェンガしたり。
母が入院してから、暗くなりがちだった我が家が久しぶりに笑顔で溢れていた。

"いつまでも回避できるわけじゃないから"

イチにぃは何を言いたかったのだろう……?
深く考えたくなくて頭の片隅に追いやってしまったけど、燻った火種は消えずに残ったまま。
それが、勢いを吹き返してくることを、この時の私はまだ知らなかった。

その時は確実に迫ってきていたのに……。

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