real face
「蘭先生、こちら私の部下で今回ご依頼の件を担当させて頂きます、佐伯主任です」

「初めまして、佐伯です。宜しくお願いします」

佐伯が名刺を蘭先生に手渡した。

「佐伯くんか、ははは。一弥くんもなかなかやるね。今日も彼女は打ち合わせにでも出ているのか?それとも何処かに隠してるのかな」

俺は内心、してやったりとほくそ笑んだ。

「あの、失礼ですが……お2人はどういったご関係で」

「そうか、まだ聞いてなかったんだな。宮本くんのお母さんと私は、いとこ同士なんだ。そして私は、まひろの父親だ。佐伯くん…娘がお世話になってます」

「そうでしたか。こちらこそ、お世話になってます」

……そっちしか言わないのかよ、叔父さん。

「佐伯くんが担当してくれると言うことで、早速話を進めたいのだが。こちらの担当が到着が遅れていて申し訳ない。もうそろそろ来る頃だと思うんだが」

時刻は11:25。
コンコン、とドアがノックされた。

「宮本課長、蘭会計事務所の宮本さまが、ご到着になりました」

「大変遅くなり申し訳ありません。失礼します」

部屋に入ってきたのは……。

「しゅ、修一!」

俺の弟であり、翔の大学時代の同級生でもある、宮本修一。

「久しぶり、兄貴。そして……翔」

「お前、こっちに帰ってきたのか……?」

「今はまだ引き継ぎ中なんだ。あと2週間はあっちとこっちを行ったり来たりすることになると思う。来月からは完全にこっちだから、よろしくお願いします。予定オーバーだったけどな」

なにが予定オーバーだ。
叔父さんは『10年あっちで修行してこい』って言ってたじゃないか。
大学卒業してからあっちに行って6年……。
修一は『5年で帰って来てみせる!』なんて言ってたから、予定オーバーってことなのか。

「さて、修一くんが来た事だし。こちらの担当はこの宮本修一だから、宜しく頼むよ。佐伯くんとも親しいようだし、安心して任せられそうだな」

修一を担当にするって?
先月会った時にはそんなこと一言も言ってなかったよな。

「ところで、兄貴。ここって"教事1課"だよな。……まひろはいないのか?」
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