【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~


「まず新郎様、新婦様、
 お二人のお召し物はKiryuさまのデザインで手配中の旨承っております。

 結婚式は内輪のみで、披露宴は会社関係者などを招いて盛大と言うことで宜しいでしょうか?」


「はいっ。それで構いません。

 披露宴は三杉の規模にあわせての大きなものになるかと思いますので、
 結婚式の方は如月の意見を参考に思い描くものをしたいと思っています」


「かしこまりました。

 それではまずはお二人に結婚式のタイプについて大きく説明をしたうえで、
 最終的に新婦様であられる如月さまにお選び頂きます」


高村はこういうと、資料を俺たちの前に並べながら説明を始めた。


神前式と言われる、神様の前で結婚を報告する儀式を行うもの。
仏前式と言われる、仏様の前で結婚を報告する儀式を行うもの。
教会式と言われる、キリスト教徒の結婚式を模して、神様の前で結婚を誓うスタイル。
人前式と言われる、宗派に捕らわれず、ご来席頂いた皆様に、結婚の誓いを見届けてもらうスタイル。


代表的なものが、この4つのスタイルになるということ。

神前式、教会式、人前式は、ホテルの中でも行うことが出来るが、
仏前式は仏様が居るお寺のご本尊での結婚式となるという説明だった。



全ての説明を聞き終えた後、
高村さんは「気になるスタイルはございますか?」っと如月に問いかけるものの、
如月はただ俯いたまま黙り込んでしまう。



「申し訳ありません。
 如月もすぐには決めかねるもののようです。

 結婚式と言えば、男性にとっても大切なものですが、
 女性は男性以上に思い描くものもあると思います。

 後日、改めて返事をさせて頂きたいと思います。

 如月もそれでいいだろう?」


彼女を覗き込むように声をかけると、
ようやく俺の方に視線を向けた如月は「えぇ」と短く告げた。


「かしこまりました。

 それでは、この後はそれぞれのスタイルを選ばれた際に使用することとなる会場へとご案内いたします」


そう言って高村さんは、俺たちを再び誘導し始めた。



まずは最初に俺たちが通された場所が、
スカイチャペルと名付けられた教会式の会場。


中央には十字架が飾られていて白を基調とした空間に、
屋根がオープンすると空の青さが鮮やかに映えるように出来ていた。



「お天気の良い日は、
 屋根をオープンにして太陽の光に祝福されながらお式を挙げられる方が多いです。

 時折、参加者全員が風船を手にして、
 空に向かって解き放たれる演出をされる方もいます」


なんて高村さんは、説明しながら俺たちを次の部屋へと案内する。



次に通された場所は、ホテル内の神殿に向かう道程には四季山水の壁画。
その奥には白木にて作られた厳かな神殿が姿を見せる。


「お祀りしておりますのは、天照大神様でございます。
 神職をお招き致しまして本格的な式が行われます」



その後に案内されたのは外の庭園と繋がる部屋。

緑の庭園と中の部屋が一体になるように構成されたその場所では、
主に人前式の結婚式が行われるという。

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