【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~


着信相手は三橋。

慌てて三橋の元へと連絡を折り返す。


「もしもし、何度も連絡を頂いてすいません。
スマホの電源を落としていました」

「お仕事中に何度も申し訳ありません。
 現在、お嬢様の行方がわかりません。

旦那様がお仕事で離れられたその夜、
 一緒に過ごそうかと提案いたしましたが、
一人で大丈夫と言うことで、下がらせていただきました。

 翌朝、参りますと、お嬢様の姿が何処にもなくて
 スマホにも何度も連絡するのですが電源が切られていて」


如月が行方不明?
三橋によって告げられて現実は、俺に衝撃を残す。


三橋の声は震えていて、
電話の向こうではうろたえながらも、
必死に自分を保とうとしているように感じる。




「光輝?」


隣に座る聖仁の視線が俺に向けられる。


「三橋、すぐに連絡がとれなくてすまない。

 俺が日本に帰れるにはもう少し時間がかかる。
 信頼できるものをそちらに向かわせる。

 如月が見つかったら、暫くの間頼みます」


三橋に告げて電話を切る。


俺が日本を経って二日。
如月と連絡がつかなくなって、約一日と言うことか……。

大人の捜索願。
警察に相談しても事件性がなければ本格的には動かない。



「聖仁。
 頼む、一綺に連絡をとって、如月の行方を追ってほしいと依頼してくれ」

「光輝?
如月さんが行方不明?」

「あぁ、今、三橋から連絡があった。
 俺たちが日本を経った明け方には行方が分からなくなっていたらしい。
 スマホの電源は入っていない」


今すぐにでも日本に飛んで帰りたい。
それが本音。

だけど今、この仕事を終わらせて帰ることが俺の為すべきこと。
その為には、此処から出来ることを精一杯していきたい。 

 
スマホの電話帳から、従兄弟の由毅【なおき】の番号を呼び出す。


電話は数コールを経て、由毅の声が聞こえた。


「光輝兄さん」

「由毅、この間話した如月の行方が分からなくなった」
「僕は如月さんを探して保護すればいんですね?」


電話の向こう側、
頼もしい由毅が次々と警備班に指示を出して
如月の行方をカメラから追いかけているようだった。

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