【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~


「あぁ。俺は二日後には日本に帰れると思う。

 俺の代わりに、暫くは一綺に対応を頼もうと思う」


「わかりました。

 綾音先輩に時折、連絡を取りながら如月さんの行方を追いかけます。
 提携企業のカメラもリンクしてもらえる様に手配します」 


「頼む」


由毅との電話を終えると、
聖仁が一綺と電話中みたいだった。


「光輝、一綺が変われってさ」


そう言って、聖仁がスマホを俺に寄越した。


「事情は聞いたよ。

 如月が消えたって?
 光輝の心当たりは?」


心当たりといっても残念ながら思いつかない。


「場所はわからない。

 だけど如月が行くとしたら真梛斗が関係する場所。
 そんな気がするんだ。

 真梛斗との会話を遡ろうとしてるんだけど生憎、その手の話はしなかったような気がして」


「何か手掛かりを思いだしたら連絡くれ。
 こっちは天城の家族からあたってみるよ」

「頼む。
 由毅にも警備班を通じて探してもらうことになってる」

「了解。
 早谷【はやせ】とも連絡とるよ」


会話を終えたころ、車は最寄の空港へと到着し、
そのままビジネスジェットの方へ手続きを済ませて移動した。



機内。
ゆったりと座席で体を伸ばしながら、軽く目を閉じる。




なぁ、真梛斗。
ちゃんと、如月を守ってくれよ。

俺の元に、無事に戻してくれよ。

間違っても、お前の傍に連れて行くなよ。


そんなことを何度も何度も念じながら、如月と離れたあの日のことを思いだしていた。 
 

籍を入れて、結婚式会場の下見をしたあの日。
俺は「結婚」と言うのをいいことに、何事にも急ぎすぎたのではないかと言う不安。


あの日、祖父によってお見合いの話が出て、再開したあの日から、如月はずっと生き急いでるように俺には映ってた。


幸せにしたいと心から思っているのに、如月の心は、何処か遠くにあるような感覚が強く付きまとう。

だからこそ、如月を一人にしちゃいけなかった。


なのに俺は……。



後悔だけは、何度も何度も押し寄せてくる。
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