【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

16.想い描く未来 - 光輝 -


如月が入院中、
学院時代の仲間たちが順番に顔を出してくれた。

一綺が毎日顔を出してくれていたのは、勿論だが、
現在海外と日本の往復を続けている裕真からも毎日のように連絡が入っていた。


意識が回復した日から一週間。

経過観察も良好の如月には、
そろそろ退院の声も宗成先生からあがっていた。


「こんにちは。
 お邪魔します」


そう言って姿を見せたのは、
今は時折、提携先の別の病院にも顔を出している、
学院の伝説の三人組の一人。



「ご無沙汰しています。
大夢さま」


学院時代の習慣で、
そのまま床に膝をおって挨拶する。



「おいおいっ。

光輝、もうオレたちは卒業した後。
今は上下関係のない友達のつもりでいるんだぜ。
それより、何時の間に結婚してたんだよ。
裕真から連絡貰ってびっくりしたんだぞ」


そう言いながら、豪快に笑う大夢さんの存在に、
ベッドの上の如月はちょっとひいているようで。



「如月、如月も学院生だったらわかるだろう?
 海神校の最高総経験者。

 ほらっ、裕真の兄貴の昂燿校の裕さんの時代に、三人いただろ。

 昂燿の伊舎堂裕【いさどう ゆたか】
 海神の高雅大夢【こうが ひろむ】
 悧羅の西園寺天李【さいおんじ てんり】」


その名前を紡いだ途端は、
如月は呆れたようにコクコクと首だけふって頷いた。


その表情からは、

『なんで、そんな雲上人がなんでアタシの前に現れてるのよ。
 って言うより、光輝、アンタどんな交友関係よ。聞いてないし』

っと言わんばかりで、ベッドの上で百面相を繰り広げてる。


そんな如月を見つめながら、
大夢さんはワハハと豪快に笑った。



「あぁ、最高。

 良かったな。
 無事に、奥さんが助かって。

 お前、学院祭でアコギ抱えて歌ってた子だろ。
 真梛斗とこいつが、ずいぶん昔から気にかけてたんだよ。
 傍で見てたら、いじらしいくらいにな。

 真梛斗、わかってるだろ。
 天城真梛斗。

 アイツは悧羅校時代に出逢ったオレのジュニアだ。

 まぁ、最後の方は海神の人間に変わったから、
 デューティーと言っても生徒総会や学校行事で顔、突合せす程度だったけどな」


そう言うと大夢さんは如月の傍にいって、
如月の様子をゆっくりと診察しているようだった。


なされるままに如月もベッドで大人しくしてる。


「宗成先生が主治医引き受けてくれてたら大丈夫なのはわかってんだけどな。

 最初に処置した人間としては、気になってな。

 もう少し早く来たかったんだけど、
 野暮用が続いて来れなかった。

 でも今は心から助けられて良かったって思ってるよ。

 あの日……アイツがここに搬送された日は、
 助けることも出来なかったからな」



そう言いながら、大夢さんは唇を噛みしめて、
救うことが出来なかった真梛斗の命を思いだしているみたいだった。
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