【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~

17.ぬくもりと小さな眩暈 - 如月 -


退院した後のアタシは、
中断していた結婚式の準備に慌ただしくなった。

退院当日、光輝の計らいでまだスムーズとは言い切れないけど
姉妹の関係を取り戻したアタシたち。


星奈と陽奈は学校が終わると、
塾やピアノなどの習い事がない日は、
父に送られてこのマンションに遊びに来るようになった。


連絡先の交換も行ったアタシのスマホには、
学校であったたわいのない話や、〇〇先生が、お友達の〇〇ちゃんがっと
いくつもの学校での出来事を伝えるメッセージが映し出される。


そんなスマホ画面を見ながら、にまにましているアタシ。
誰がそんなアタシを想像できた?


そんなアタシを暖かい笑顔と共に見守りながら、
旦那様は、毎日マンションから会社へと出掛けていく。


「如月、今日の12時。
 車を迎えにやるから、出掛けられる準備しておいて」


そう言って出掛ける玄関。

いつもは三橋が光輝の鞄を持っていくんだけど、
最近は三橋からアタシが鞄を奪って玄関へとついていく。



「はいっ。
 行ってらっしゃい」


そう言いながら鞄を手渡し、
きっちりと結ばれていて崩れていないのを知りながらも、
わざとらしくネクタイをなおすふりして手を伸ばす。


すると、突然、不意打ちのように降り注ぐ口づけ。


戸惑ってるアタシに、
「行ってきます」っと満面の笑顔を向けて出掛けて行った。



えっ、嘘……。

思わず自分の唇に触れる指先。


ここに柔らかい光輝の温盛が、
確かに降り注いだ。


キスなんて初めてじゃないのに、
なんで、たかだかそれだけでこんなにアタシ、
うろたえてるの?


バクバクと高鳴り続ける鼓動を隠すように、
アタシは慌てて自分の部屋へと駆け込んで、
ベッドへと突っ伏した。
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