【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~
「綺麗だよー。
如月ちゃん」
「あぁ、とっても綺麗だ」
おじちゃんとおばちゃんは、
そう言ってアタシの花嫁姿を見て喜んでくれた。
それだけで涙がじんわりと溢れてきて、
とめられなくなる。
そんなアタシにKiryuさんは声をかけてくれて、
すぐに手直しをかってでてくれた。
「三杉様、蒔田様、そろそろお時間でございます」
その声にババアは、
さっさとベールダウンをして中へと入っていった。
高村さんの声に、皆がチャペルへと移動していく。
だけど今日来ているはずの妹二人の姿がない。
星奈と陽奈にはちゃんと見て欲しかったのに……。
そう思って二人の姿をキョロキョロと探す。
「どうかしたの?」
そんなアタシに光輝はといかける。
「さっきから星奈と陽奈の姿を見てない気がして」
思ったままの言葉を紡ぐと、
父が「星奈、陽奈、お姉ちゃんが呼んでるよ」っと、
何処かに向かって声をかけた。
その途端、
淡い色のドレスを身に纏ってメイクアップした妹たちが姿を見せる。
「えっ?何?
二人とも、とっても可愛いんだけど」
二人の妹に手を伸ばす。
「今日は、星奈も陽奈もお手伝いするの。
お兄ちゃんが、ベールガールとリングガールをお願いしますって
ドレスと一緒に頼んできたのー」
「そう、陽奈も星奈も緊張―するよー。
でもお姉ちゃんとお兄ちゃんの為に頑張るのー」
そう言うと妹たちはアタシの長いベールの裾に手をかけた。
ちょっとサプライズが凄すぎるんだけど。
嬉しいのと驚いたのと、
ちょっと仲間外れ感があって……アタシの心の中はぐしゃぐしゃだー。
「では、新郎様はチャペルの中へ」
「後で」
高村さんの声に続いて、
光輝はアタシに振り向いて告げると中へと入っていった。
チャペルの中からオーケストラの音色が広がってきて、
中に繋がる扉がゆっくりと開かれた。
父がエスコートする腕に自分の腕を絡めて、
ドレスの裾を踏んでこけないように足元に集中しながら一歩ずつ一歩ずつ歩き進めていく。
バージンロードを歩くアタシのベール越しに視界に入ったのは、
ジジイが手に抱えた、大好きなバーバの写真。
そして三杉家側の関係者席には、
同じく真梛斗の写真を抱えた真梛斗の両親の姿がうつる。
バージンロードを中ほどまで歩いた頃、
アタシの隣は父から光輝へと交代した。
光輝にエスコートされながら本日最大の難関、
祭壇のプチ階段をのぼるために、
ゆっくりと足を上げながらドレスの裾をさばいた。
映えるからと進められて、
重たーいお引きずりのロングトレーンのドレス。
どんな風に皆に見えているのかわかんないし、
アタシが後ろを見て確認することも出来ない。
そうこうしている間に、
ベールガールをしてくれた妹が次の役割の為に
アタシたちの元から移動していく。
そして儀式は厳かに進んでいった。
聴きなれない讃美歌が室内に広がり、
聖書朗読やら誓約の時間。
そこでアタシは、
テレビでよく見る『病める時も、健やかなるときも……』のくだりを初体験する。