【B】箱庭の金糸雀 ~拗らせ御曹司の甘いぬくもり~


「はい。誓います」と答えるその瞬間を待ち構えながら。


そして二人が誓い合ったその後には、
再び、妹たちがやってきて結婚指輪を運んできた。


結婚指輪も聞いてないし。

何時の間に用意したの?


そう抗議にも近いまなざしで、
ベール越しに光輝をとらえる。

すると光輝は『驚いた?』と言わんばかり、
すました顔して笑ってた。


もうっとふくれっ面をしようとした頃、
ベールアップの時間やってきて、
お互い密着した体と互いの息すらも意識できそうな距離での出来事に、
なされるがままに真っ白になっていく。


そのとどめで抱き寄せられて口づけをふらされた。



えっ、何?
この時間。


その後は翻弄されるばかりで、
記念すべき挙式は後半が夢現のような状況で終わりを迎えた。



その後も、アタシはベールを控室ではずして、
再度、パーティーの席へと顔を出した。


夕方、全ての予定が終わったアタシたちは
光輝が予約してくれている上のVIP ROOMへと移動した。


ベッドを見た途端に疲れたと言わんばかりに、
アタシは突っ伏した。



「お疲れ様」

「お疲れ様」


そう言って声をかけたアタシに、
光輝は何時ものようにアイスハーブティーを手渡した。


最初の頃はかなり抵抗があったこの味も、
もう慣れたもので今ではホッとしているアタシすら存在する。


「お風呂、先に行っておいで。
 
 疲れたでしょ。
 俺は後でいいから」


そう言ってアタシを浴室へと誘導してくれる光輝。


言われるがままにシャワーを浴びて、
さっぱりさせると……それと同時にドキドキしてる自分が居る。


入籍もしてる。
今日、結婚式もした。


いよいよなのかな?

今日、アタシは光輝と一つに慣れるのかな?

そんなことを考えながら、
幸せな時間に満たされていた。


お風呂からあがって光輝と入れ替わった後も、
浴室に響くシャワー音だけでドキドキしてる。


ガラガラっとドアが開いたのを確認すると、
耐えられなくなって先に一人でベッドへと潜り込んだ。


ドライヤーを使う音が響く。

そしてアタシが眠る場所にゆっくりと近づいてくる足音。


もぞもぞっとして布団にベットに入ってくるんだって想像するだけど、
もうバクバクしてておかしくなりそうなアタシ。


こんなにも振り回されてるアタシ自身に笑えて来そうになりながら、
その瞬間を楽しんでた。


だけど足音は遠ざかって……。


「えっ?何それ?スルー?此処で」


待ちきれなくなって、
ベッドからガバっと起き上がったアタシを、
冷蔵庫からアイスハーブティーをグラスに注いで飲みながら笑ってた。


< 100 / 115 >

この作品をシェア

pagetop