ディモルフォセカの涙
第四章 崩される
夜は続いている♦実花
『ユウ』----貴方の声に、ざわつく私の胸。
『ユウ』----私の声に、振り返ることのない貴女。
突然、吹き荒れた風は、全てのものを一度にここへ運び、また全てのものをここからどこかへと連れて行く。
そして、この場から呆気なく全てのものは消えた。
教室から溢れ出んばかりの人々の姿は今はどこにもなく、ただ汚されるだけ汚されてボロボロになった教室が、ここにあるだけ。
ただ、空しいだけの私が一人、ここに居る。
荒らされた教室の後片付けをしている私に聞こえる足音、ユウさんかと思えば違った。
「王、あなただけ……
わざわざ戻って来なくても
良かったのに」
立て付けが悪くなって、壊れてしまった扉に触れる手。
「すぐには直りそうもない
無様なものだな、こんなにも荒れ果てて」
「楽器が無事で何よりだわ
あんなにも大勢、来るかしら」
当初の予定よりも大幅に超えた人の多さに、私はユウさんの人気の凄さを思い知らされるのだった。
「お嬢、君は何を考えてる
生徒を使ってあんな小細工をして」