セカンドラブは魔法の味

 抱きしめられると、心優はハッとなり、幸弥を突き放そうとしたが・・・。

「しばらく、このままでいて下さい」

 幸弥の静かな声が、心優の動きを止めた。


 ギュッと抱きしめられ、幸弥の鼓動が伝わってくる・・・。

 トクン・・・トクン・・・規則正しい鼓動を感じると、心優の心に何だか暖かい光が差し込んでくるのを感じた。




 心優が医大生の時。

 体調が悪く、足元がフラフラしていた心優は、うっかり歩道橋で階段を踏み外して転落してしまった。

 その時、偶然通りかかった春子が心優を助けた。


 まだ結婚するちょっと前で、弁護士だった春子。

 カチッとした黒いスーツ姿で、弁護士バッジをつけている春子はバリバリのキャリアウーマンのようにカッコいい。



 救急車で心優を病院に運んで、暫く待っていた春子。


 すると手術室から医師が出て来た。


「あの、どうかしたんですか? 」

 春子が尋ねると、医師は少し焦った顔をしていた。

「輸血が必要です。貴女の血液型を教えて下さい」

「私、AB型です」

「よかった、患者さんもAB型なんです。輸血にご協力お願いできますか? 」

「はい、喜んで」



 春子が輸血してくれたおかげで、心優は一命をとりとめた。



 心優が目を覚ますまで、春子は傍にいてくれた。


 身内がいなかった心優は、気が付いた時、ハル子が傍にいてくれた事がとても嬉しくて目を潤ませていた。
< 28 / 71 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop