婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


 昨晩、ハロウィンマッチングパーティーの現場に入ると貴晴さんに話すと、『里桜は何か仮装するの?』とすぐに訊かれた。

 着ぐるみを着る予定だと話すと、貴晴さんは『着ぐるみなら、まあ安心かな』と微笑んだ。

 何もそんなに心配することなんてないのに、そんな風に言われてしまうとリアクションに困ってしまった。


「ちょっとふたり、来てくれるー?」


 会場内で立ち話をしていると、奥から芳賀さんに呼びつけられる。

 会場入り口を入ってパーティー受付奥に、衣装を選ぶコーナーを設置している。

 その奥が男女分けた簡易の更衣室だ。


「なんすか芳賀さん、どうしました?」


 照井さんと共に芳賀さんの元に行ってみると、衣装を眺めて腕を組む芳賀さんの姿が。


「発注から時間かかってた衣装何点か、今日直接現地着でお願いしてるんだけど、まだ来てないのよ。まぁ、数足りてないわけじゃないんだけど」

「そうなんですか?」

「そうなの。紀平さんの着ぐるみも来てないから、悪いんだけどこの中の……」


 衣装のかかるラックの一番の端の方から、芳賀さんは数個目のハンガーを手に取った。

< 141 / 223 >

この作品をシェア

pagetop