婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
昨晩、ハロウィンマッチングパーティーの現場に入ると貴晴さんに話すと、『里桜は何か仮装するの?』とすぐに訊かれた。
着ぐるみを着る予定だと話すと、貴晴さんは『着ぐるみなら、まあ安心かな』と微笑んだ。
何もそんなに心配することなんてないのに、そんな風に言われてしまうとリアクションに困ってしまった。
「ちょっとふたり、来てくれるー?」
会場内で立ち話をしていると、奥から芳賀さんに呼びつけられる。
会場入り口を入ってパーティー受付奥に、衣装を選ぶコーナーを設置している。
その奥が男女分けた簡易の更衣室だ。
「なんすか芳賀さん、どうしました?」
照井さんと共に芳賀さんの元に行ってみると、衣装を眺めて腕を組む芳賀さんの姿が。
「発注から時間かかってた衣装何点か、今日直接現地着でお願いしてるんだけど、まだ来てないのよ。まぁ、数足りてないわけじゃないんだけど」
「そうなんですか?」
「そうなの。紀平さんの着ぐるみも来てないから、悪いんだけどこの中の……」
衣装のかかるラックの一番の端の方から、芳賀さんは数個目のハンガーを手に取った。