婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「ハロウィンのは、毎年大好評なんだよね。この雰囲気とか、普段のパーティーとは別物だからね」
薄暗い会場で仮装をして楽しむ大人の婚活イベント。
確かに、前に日菜子に誘われて行ったマッチングパーティーとは雰囲気も形式も異なる。
この雰囲気に流されて話がまとまってしまうカップルも出てきそうだ。
「私、ちょっと裏に引っ込むけど、紀平さんひとりで大丈夫?」
「あ、はい。大丈夫です」
「少ししたら戻るけど、何か対処できないことが起こったら呼びにきて」
「わかりました」
芳賀さんを見送り、ひとり見守りを続ける。
男性も女性も、参加者はみんな積極的に相手を見つけ会話を楽しんでいる。
自分には到底馴染めない世界だな、と見守っていると、横から「すみません」と男性の声で呼びかけられた。
「はい、どうかされましたか?」
「あー、いや、あの、ここのスタッフさん、ですよね?」
「あ、はい……」
話しかけてきたのは、ひとりの男性客。
私と同じようなオオカミの擬人化仮装をしている。
薄暗い店内だけど、この人、どこかで……?
「さっきから、可愛いなって見てたんですけど、スタッフさんを口説いたらやっぱり規約違反とかですかね?」
「えっ、あ、それは……」