婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


『まだ……俺だけの里桜にはなれない?』


 耳元で聞こえた、あの時の貴晴さんの言葉が忘れられない。

 もう、私の身も心も全部、貴晴さんのものになっている。

 それはきっと、初めて会った日からすでに始まっていて、再び巡り合い、日々を重ねることで大きくなっていったのだ。

 あの時、すぐに想いが伝えられなかった。

 私はもう、貴晴さんしか見えてません。

 そう、言いたかったのに……。

 簡潔に言ってしまえばその一言だけど、もっといろいろな想いを伝えたいと想ったら、瞬時にまとめることができなかった。

 でも、そんな口下手を発揮している場合ではない。

 今のこの気持ちを、ちゃんと貴晴さんに伝えたいと思っている。

 サンドイッチを半分まで食べたところで、飲みやすい熱さになってきたラテを口にする。

 カップを手元に置いたところで、ガラスの向こうに見えてきた顔に釘付けにされた。

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