婚前溺愛～一夜の過ちから夫婦はじめます～

　私には勿体無いリングで、こんな素敵で豪華なもの気軽に着けられないと手が震えたくらいだった。

　貴晴さんには着けていてほしいと言われたけど、もし間違って落としてしまったら……なんて、そんな不吉な心配ばかりして、なかなか着けて外出する勇気が出せなかった。

　箱の中に飾って、美しい……と眺めているのが安心だし幸せ。

　だけど、それでは贈ってもらった意味を成さないから、最近は徐々に身に着けることに慣らせている。

　これを贈られた日、驚きを上回って感激で上手く言葉が出てこなかった。

　貴晴さんにとっては〝魔除け〟みたいな意味での贈り物だったかもしれないけど、私にとってはエンゲージリングというだけで特別のもの。

　嬉しくて、でもその気持ちをうまく表現できなくて、ありがとうございますと、嬉しいという言葉しか口にできなかった。