婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「里桜が見かけたっていう妊婦の女性にも、さっきお会いしたよ。晴斗のところにいた」
「そうでしたか……」
「向こうの彼女も、俺が現れたとき相当驚いた顔してたけどね」
貴晴さんはそのときのことを思い出したのか、苦笑いを浮かべる。
その表情を見ていると、今まで今日のような勘違いや、顔が同じことで厄介なことに多く遭遇したのかなと思ってしまった。
「でも、良かった……ちゃんと誤解が解けて。もしあのまま里桜が見つからなかったらと思うと……」
横から伸びてきた手が私を引き寄せて、ころんと貴晴さんの腕の中に収まってしまう。
貴晴さんは私の頭を何度も何度も撫で、存在を確かめるように髪に口付けた。
「貴晴さん……」
こんなにも大切にしてもらっていることを改めて実感し、じわじわと胸が次第に熱くなっていく。
伝えたい――そんな気持ちが一気に強まり、身を任せていた体勢から両手を伸ばして抱き付くように彼の首に腕を巻き付けた。