婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~
「里桜ちゃんがここからいなくなるのは、やっぱり寂しいなぁ」
「洋司さん……」
「でも、こんなしょうもない職場で無理して働く必要はない」
「え……?」
洋司さんの口から出てきた意味深な言葉に、じっと洋司さんの顔を見つめる。
普段、何か愚痴をこぼしたり、誰かの悪口を言ったり、ご老人によくあるそういった文句を口にしたことの全くない洋司さんが、そんなことを言うのは珍しい。
しょうもない職場……って、どういうことなんだろう?
「偶然、聞いてしまったことがあったんだ。里桜ちゃんのことを、数人のスタッフが話題にしているのを」
「え……それって……」
「内容は、私から聞けば全部妬みのようなものだったよ。私たちから好かれていることも、気に食わなかったんだろうね」
利用者さんに聞こえるところで、そんな話題を出されていたことを知り胸が痛む。
同時に、腹立たしい気持ちも沸き起こった。
「変な時期に里桜ちゃんが異動だとか言い渡されているのを知って、ここの内情を調べさせたんだよ。そうしたら、いろいろと納得できることがわかった」
「え……?」
「どうやら、ここの施設長と、里桜ちゃんを目の敵にしていたスタッフが関係を持っていると」
「えっ、うそ……」