婚前溺愛~一夜の過ちから夫婦はじめます~


「良かった」

「あの……でも」


 何かに戸惑うように、俺を見つめる彼女の瞳が揺れている。

 微かに潤んだその目をじっと見つめ返した。


「本当に……私なんかで、いいんでしょうか……?」


 思いもよらない問いに、彼女の手からグラスを抜き取る。

 考えるよりも返事をすることよりも先に、頬に触れていた手で彼女を引き寄せていた。

 近付く唇を許可なく奪う。

 薄らと瞼を持ち上げた細い視界の中で、彼女の瞳が大きく開いているのを確認した。

 突然の口付けから解放すると、耳元へ唇を寄せる。


「あなたじゃないと……里桜じゃないとだめなんだ」

「成海、さん……」


 再び正面から目を合わせ、鼻先が触れ合う近距離で見つめ合う。

 どうしたらあなたの全てが手に入るのか、俺はこれだけ頭を悩ませているのに。

 そんな気持ちをぶつけるように、さっきよりも深く唇を重ね合わせた。


< 94 / 223 >

この作品をシェア

pagetop