恋ごころは眼鏡でも見えない

陽向視点

~陽向視点~


朝イチで、高橋が学校一の美女と名高い桐生真理(きりゅう まり)に告白すると報告を受けた。


「で、何で俺に報告するの」

「陽向も桐生のこと好きなんだろ」

「好きじゃないって」

俺と桐生が付き合ってるという噂がどこからか流れてる。

桐生にも迷惑だから否定して回ってたら、今度は俺が桐生のこと好きだという噂に変わったらしい。

高橋のような報告や、親切心か冷やかしか、桐生情報が寄せられるようになった。


「強がるなよ」

「素直になれば協力するよ」

高橋と長野小雪(ながの こゆき)が半笑いで言う。高橋と小雪は幼少期からの腐れ縁だ。


「ほんと違うって」

「じゃあ、いつも告白断る時に言う好きな人って誰?」

「何で知ってんだ!?」

「秘密」

女子同士の情報網でもあるのか、小雪が余計なことを口にした。
それに高橋が乗らない訳もなく、ニヤニヤと追及してくる。

「俺にだけ好きな子を言わして、お前は言わないなんてないよな?」

「お前、自分から報告してきただろ」

「はぁ?それは陽向が桐生のこと好きだって言うからだろ」

「言ってない」


「桐生が好きだから告白断ってるんだろ?」

「だから違うって」


さっきからこんなやり取りを繰り返している。

「もう言っちゃった方が早いよ」

小雪の言うことに納得しそうになる。
この状態の高橋はしつこい。とにかく、めんどくさい。

「あーもう、わかった」

「おー。やっと桐生のこと認めるのか」

高橋は桐生だと決めてかかっているが、違う。

「違うって。……小林さんだよ」

聞かれてないか周りを確認しつつ、小声で言う。


「小林?」

高橋はピンと来てないようだ。

嘘だろ、1年の時も同じクラスだっただろ。しかも、お前が告白する桐生の親友だよ。

「ほら、小林さん」

小雪が視線で小林さんを差す。


高橋は小林さんを見てから俺に向き直り、口を開いた。


「はあ!? あの地味眼鏡かよ!」

「声がでかい!!」

高橋をたしなめる。正拳で。

「ちょっとぉ! 地味めが……小林さんに聞こえてるよ!」

「最悪だ……」

いい印象になるために、手伝いとかしてるのに……。


小林さんは怒った顔で拳を振り上げる。けれど、その顔は一瞬でふにゃりと笑顔になる。

はぁ……かわいい……。


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