恋ごころは眼鏡でも見えない
放課後、小林さんに謝られた。
昼休みの俺の態度が勘違いさせたらしい。恥ずかしながら、事情を説明したら小林さんは笑ってくれたので良しとする。
「よかった~。怒らせたかと思って、午後の授業中ずっと新山君のこと考えてたんだよー」
なんて、好きな子に言われたら期待するからやめてほしい。
「……というのは冗談だけど……」
「……冗談かー」
案の定、俺のこと好きなのかなーと、ちょっと期待してしまった。
そっかー冗談かー。
小林さんともっと話していたくて話題を探す。
今日の授業の話とか?
だめだ、小林さんに睨まれた(と思った)ショックで、授業内容まったく覚えてない。
「小林さん、桐生待ち?」
高橋が告白することを思い出し言った。
「あ、うん。そう」
「モテるね、桐生」
と言うと、小林さんがすかさず
「いやいや、新山君が言う?」
と、返してくる。
俺としては、『いやいや、それ、小林さんが言う?』なんだけど……。
「俺、全然モテないよ」
落としたい女の子を目の前にして、そう応えると、
「うそ」
小林さんは少し口を尖らせて言った。微かな表情の変化もかわいい。
「ほんと、モテない」
確かに、俺の顔は万人受けするって意味ではモテるのかもしれない。ただ、顔がウケてるだけで中身までモテてる訳ではない。
見た目で好きだと言われて、付き合って、中身に幻滅されて、振られて、を繰り返すのもショックなものだ。
それに、万人受けはいらないから、小林さんだけにモテたい。