恋ごころは眼鏡でも見えない

「座らないの?」

小さくむっと考えてる様子の小林さんだけど、促すと素直に席に着く。
かわいい。


「今日、眼鏡違うね」

と言うと、小林さんは驚いた顔をする。なんで気づいたんだって顔。

昼休みに気づいてました。

「……うん。眼鏡壊して代理を掛けてる」

「眼鏡って意外と強いよな。どうやって壊したの?」

落とした?踏んだ?

ちょっとした興味だった。小林さんのことは何でも知りたい。


小林さんは悩んでいる様子だ。もしかしたら、聞いちゃまずい事だった?
しばしの逡巡ののち、小林さんはおもむろに口を開いた。

「目覚まし時計を止めようとして、間違えて叩き折っちゃったの」

叩き折った!堪えきれず吹き出して笑ってしまう。


答えを溜めて溜めてこれか!


「そんなに面白い!?」

小林さんはちょっと困ったように言う。

うん。面白い。

「だって、小林さんが、眼鏡叩き折るとか、予想外過ぎて」

しっかりしているように見えて、割と抜けてるんだなぁ。
新しい発見だ。


「……恥ずかし」

そんな呟きが聞こえて、彼女の方を見ると俺から顔を逸らして窓の外を見つめていた。

表情は窺えないが、耳が赤くなっている。



「かわいい」

そんな心の声が漏れてしまったのに気づいたのは、彼女が真っ赤な顔で振り向いたからだった。

「眼鏡、似合ってる」

誤魔化すようにそう続けると、彼女は小さくありがとうと応えた。

かわいい。

この反応が見れるのだったら、何度でも言ってやりたい。

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