愛しの Silver Fox 様
「椿はお狐様に嫁入りするから、この神社を継ぐのは楓お前だよ。隣町の多々羅川神社の次男と楓は結婚するんだよ」

物心つく頃から楓は祖母にそう言われて育ってきた。

姉の椿の結婚相手が生まれながらに決まっていたので、自分にも決められた相手がいることは別に疑問にも思ったことは一度もないし不満もなかった。


多々羅川神社の次男は、楓と同い年の幼馴染で幼い頃はよく神社の裏山で一緒に遊んだ。しかし小学校に上がった頃から、直哉は楓に対して無口で寡黙になり、昔ほど仲がいいわけではなくいつのまにか用事がない限り言葉を交わすこともなくなった。

それでもお互いに、大人になったら夫婦になることは理解しているので、特別に異性と親しくすることもなく、まわりの友人たちと同じように恋愛で騒ぐこともなかった。
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