ココロの好きが溢れたら

繋がる心

side 陽毬


「落ち着いたか?」

「うん、ありがとう」


ハルがソファに座る私にアイスティーが入ったコップを差し出す。

それを受け取って1口飲むと、涙で水分不足だった体に染み渡る。


向き合わなければと思っていても、真実を聞くのが怖くて涙が止まらなかった。

まさかあそこでハルが帰ってくるなんて思ってなくて、慌てて涙を隠そうとしたけれど、それも出来なくて。


どうしようと混乱しているうちに、ハルが「好きだ」って言ってくれた。


最初は驚いて、信じられなくて。

だって、ハルが私を好きになってくれたなんて夢のようだったから。

でも、そんな私にハルはもう一度好きだって言ってくれた。


本当に好きになってくれたんだ、って。

夢じゃないんだって分かった瞬間、もう涙が止まらなかった。

色んな感情が溢れ出て、止めることなんて出来なくて。

ハルはずっと私を優しく抱きしめてくれてた。

初めてハルの温もりに包まれて、安心して。


ハルが好き。

大好き。


そんな思いが自然と言葉となって溢れた。

あんなにも好きだと伝えることを怖がって躊躇してたのに。

そんな不安はもうどこかに飛んでいってた。


でも、私にはまだ向き合わなくちゃいけないことがある。



「ハル、私ね……ハルと沙織ちゃんの噂を聞いたの」


好きだと言ってくれたハルの言葉を疑ってるわけじゃない。

でも、ここでちゃんと向き合わなければ、私はまた臆病になって、弱い自分になってしまう気がするから。


私の隣に座ったハルが、私の目を真っ直ぐ見つめてくる。


「沙織とはただの幼なじみだ。それ以上は何も無い」


幼なじみ…。


「ハルはそうでも、沙織ちゃんは違う、よね……」


私に向けられたあの視線は『嫉妬』、『牽制』、『敵視』……そんな意味の篭もった視線だった。


「陽毬が聞いた俺と沙織が付き合ってるって噂は、沙織が自分で広めたものらしい」



そしてハルは、俊太くんから沙織ちゃんのハルへの気持ちと真相を聞いて、初めてその噂の存在と沙織ちゃんの気持ちを知ったのだと言った。


「俺が周りをよく見てなかったせいで、噂が広まってることにも気づかなかった。沙織にも、これからちゃんと向き合って話をするつもりだ」


そっか。

よかった……。


「陽毬、他に聞きたいことがあるなら何でも言ってほしい」


「もう大丈夫だよ。ありがとう」


大丈夫。

不安なことはもうない。

ちゃんとハルが話してくれたから。


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