ココロの好きが溢れたら


「じゃあ、お母さん達帰るからね」

「うん」


結局、ハルが戻ってこないままお開きになった。

美智子さんが言うには、いつも練習は夜8時頃までみたい。


「晴翔は一度この家に来たことあるし、自分で勝手にシャワー浴びたりするだろうから、もし晴翔が遅いようなら陽毬ちゃん先に休んじゃってね」



来たことあったんだ…。

だから、私をみても驚かなかったんだね。


…いきなり抱きついてくるとは思ってなかっただろうけど。


身体が勝手に動いちゃったんだもん、仕方ない。


みんなが帰ってしまい、急に静かになった家のリビング。


この家はお母さん達が私達に内緒で建てたみたいで、入学祝いのプレゼントなんだって。


プレゼントにしては高価すぎるでしょ。

家具から電化製品まで揃えちゃって。


クッションを抱きしめながらソファーに座っていたら、ガラステーブルの上に置いてあった携帯が鳴った。


メッセージが届いたことを知らせる音で、開いてみるとさっき別れたばかりのお母さんからだった。


【明日、学校終わったらハルくんと生活用品買っておいで。ハルくん明日練習もお休みなんだって】



生活用品…。



確かに、もうなんでも揃ってる家だけど、コップとかお箸とか、そういった細かいものはまだなかった。


夕飯の時は割り箸と紙コップだったもんね。



行きたい、けど…。


「行ってくれるのかな…」


あの目を思い出すだけで身体が震えてしまう。


『俺に近づくな』


あの目がそう言ってた。


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