アラフォー×バツ1×IT社長と週末婚
「どうせ、持ち主のお友達かなんかでしょう?」

高級バッグを持ったご婦人が、私を見てヒソヒソ言っていた。


いいもん。

別に、一生に一度の経験だし。

私はツンと上を向きながら、運転手さんに後部座席のドアを閉めて貰った。


そしてスーッと、また滑るように、車は走り始めた。

さようなら、高級ホテルのような病院。

椅子もふかふか。

看護師さんも、お医者さんも優雅でよかったよ。

私は、病院が見えなくなるまで、見送った。


「いい病院でしょ。」

「えっ!?」

まさか名残惜しんでいたのが、バレた?

「父と兄が、働いてる病院なんです。」

「お父さんと、お兄さん、医者なんですか!?」

私の驚きように、折橋さんも驚く。

「え、ええ、まあ。」


医者の息子にして、IT会社の社長!?

どんなご身分なんですか?

「あの、折橋さんはお医者さんに、なろうと思わなかったんですか?」
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