ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
夕方、王太子夫妻の到着が知らされた。会場にはすでに肉まん用保温器が設置されていて、約五十個の肉まんが蒸し上がっている。

雪が積もっていたため、到着は一時間遅れだった。広間に集まった人々が待ちわびた頃にやってくる。

王太子夫妻は新しい物好きだと聞いていたので、若いのかと思っていた。しかし、姿を現したのは、イクシオン殿下の両親と変わらない五十代くらいのご夫婦だった。王宮内も寒かったからか、毛皮の外套を脱げずにいるらしい。

厳格そうな雰囲気で、庶民ソウルを胸に抱く私は膝がぶるぶると震えてしまう。

「いやー、冷えるねえ。我が国がもっとも寒いと決めつけていたが、ここの国もなかなかですな」

喋ると、案外気さくそうに思えるから不思議だ。

それにしても、雪国出身なので寒さに強いと思っていたが、そんなことはないようだ。すぐさま、出迎えた王太子カイロス殿下が肉まんを勧めてくる。

思い返したら、カイロス殿下が国王夫妻に私の料理を絶賛したために、こうやって料理をふるまう事態になったのだ。

諸悪の根源だとばかりにジッと見つめていたら、カイロス殿下と目が合ってしまった。

あろうことか、カイロス殿下は私にウィンクを飛ばしてくる。それに気付いたイクシオン殿下が私の肩を引き、一歩前に出てきて背中に隠してくれた。
< 190 / 253 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop