ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
ここでふと思い出す。実家の姉達がぼやいていた言葉を。

――今日、リティス子爵家のご子息からペンダントをいただいたのだけれど、先月お父様が買ってくださったペンダントのほうが数百倍すてきでしたわ。

――わかりますわ、お姉様。わたくしも一昨日、ネーベ商会の会長からブレスレットをいただいたのですが、誕生日にお父様がくださったブレスレットのほうが、輝いて見えましたの。

ありし日の姉達の会話を耳にしながら「いや、ぜんぜんわからねえ」と思っていたが、それと似たような状況にあるのだろう。

これは、アストライヤー家の血なのか。恐ろしすぎて、震えてしまう。

『だったら、やりたいことはないのか? 例えば、余の背中に跨がり風のように草原を駆けてみたいとか、空を飛んでみたいとか』

「いや、絶叫マシーンは好きじゃないから」

昨日、リュカオンの背中に乗ったときを思い出し、ゾッと背筋が寒くなる。

高いところは苦手だし、早い乗り物も好きではない。

絶叫マシーンを好んで乗りたがる人の気持ちは、まったく理解できなかった。

『“絶叫ましーん”? むむっ、お主の世界には、面妖な乗り物があるのだな。あれで、皆、どこに行っているのだ?』

「いや、どこにって、あれは恐怖を楽しむだけの乗り物で、移動目的で乗っているわけじゃないの」

『よくわからん娯楽が存在する世界だな』

「否定はしないわ。それより、私の記憶をウィキペディアみたいに使わないでくれる?」

『“うぃきぺでぃあ”だと? ああ、なるほど。すまんな』

この聖獣は、理解できない単語があると、すぐに私の記憶を覗き込むのだ。そういうのはよくないと、抗議しておく。

『実家に帰らなくてもいいのか? 我にかかれば、ぴゅうっと一瞬で戻れるぞ?』

「いや……実家には、しばらく帰らないほうが賢明だと思うの」

『昨日は帰りたがっていたのに?』

「事情が変わったのよ」

『そうか』
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