ポンコツ令嬢に転生したら、もふもふから王子のメシウマ嫁に任命されました
『本当においしかった。我は、機嫌がすこぶるよい。アステリアよ』

「何?」

『特別に、願いを叶えてやろう』

「え、願い事?」

『ああ、そうだ。この宮殿をぶっとばしたいとか、実家の父をひと泡吹かせたいとか、いろいろあるだろうが』

「物騒な」

宮殿がなくなったら、イクシオン殿下は立ち直れないだろう。“俺だけの城”感が半端ないのだ。

実家の父はおそらく、私とイクシオンの結婚話が伝わって、ひと泡吹いているに違いない。

その様子を見たかったような気もするけれど、猛烈に怒られそうなので、いなくてよかったのかもしれない。

他に何か願いがあるかと言われても、特に何も思いつかない。

なんといっても、私はアストライヤー家に生まれた。ドレスも、宝石も、馬もお菓子も、好きなだけ与えられて育ったのだ。望むものなど、何もなかった。

もちろん、誰かを陥れようとか、何かを破壊したいとか、そういう願望も浮かんでこない。

「特に、ないかな?」

『本気か? 我は最強の聖獣であるぞ?』

「うん」

欲しいものがあったとしても、自分で手に入れなければ意味がない。

『驚いたな。お主のように、無欲な女は初めてだ。あの、イクシオンの嫁として、お主以上にふさわしい女はいないだろう』

「う、嬉しくない」
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