人生の待ち時間


会社で使っている膝掛けに、マリコが使っている膝掛けも貸してくれたので持参した。会社のロッカーに置きっぱなしになっていた使い捨てカイロ二つも持ってきた。

が、日が沈んでから、どんどん気温は下がっていった。薄い物をいくら重ねても、寒いものは寒い。

アルコールでも飲んでいれば、ちょっとは体温も上がったかもしれないが、車があるので、今日はノンアルコールの酎ハイで我慢していた。

寒いなぁと思いながら、両方の二の腕を擦っていたら、ズシッと肩が重くなり、背中が温かくなった。

「っ!?」

斜め後ろを振り仰げば、ニコッと笑ったタカくんと目が合った。タカくんが着ていたスーツのジャケットを、私の肩に掛けてくれたのだ。

「あのっ!これ……」

戸惑いながら口を開けば、私の隣に座りながら、タカくんが答える。

「アイちゃん、寒そうだったから。女の子は、冷やしちゃダメでしょ」

「でも!それじゃ……」

「俺は、大丈夫!飲んで、ぼちぼち酔ってるし。寒そうなアイちゃん見ている方が、もっと寒く感じる」

肩を竦めて、タカくんが言った。

「あっ……ありがとうございます!あったかいです!」

「おう!」

ジャケットからは、タカくんの体温を感じた。タカくんの優しさに、心まで温かくなった。


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