捨てられる前に捨てましょう
窓の外に目を向けると、数人の人影が近づいて来る。目を凝らし確認すると武器を持った男たちのようだった。
盗賊ではないような気がするが、正体は分からない。ただ御者ひとりでは荷が重いかもしれない。

「アディは中に居て」

私は剣を手に馬車を出ようとした。もちろん御者に加勢する為だ。

けれどアディは私の腕をがしりと掴んだ。

「何してるんだ?」

「見ての通りよ。御者と一緒に不審者を撃退して来るのよ」

「馬鹿を言うなよ! お前は女だろ? 俺が行くから大人しくここで待ってろ」

私はきっとアディを睨んだ。

「馬鹿ってなに? 女だって剣くらい使えるわ。それにアディが危険な外に出て行く方が有り得ない。少しは王子だという自覚を持ってよ」

王家の剣と盾になることが将軍職を務める我が家の役目。私が王子を守らなくてどうするの?

私は幼い頃から厳しい訓練を受けて来た。おかげでそこら辺の男には負けない自信がある。

絶対に大丈夫。そう自身を鼓舞して飛び出そうとしたけれど、ぐいととても強い力で腕を引かれた。

何が起きているのか分からない内に、気付けば座席の上に押し倒される形になっている。

目の前にはアディの顔。


見た事もないような鋭く真剣な目で私を見下ろす彼は、低い声で囁いた。

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