捨てられる前に捨てましょう

精一杯の告白

捕らえた不審者たちはロープでしっかりと拘束した。

このままにしてはおけないので、御者が馬で我が家に戻り兵士を連れて来るのを待つことにした。

アディと二人きりの車内には気まずい空気が濃厚に漂う。

何か言って欲しいのにアディはなかなか口を開かない。仕方なく私から切り出した。

「怪我がなくて良かった」

「……大したことのない相手だったからな」

「そうなの? 盗賊か何か?」

「多分そうだろうな。護衛兵がいない馬車だから狙ったんだろう」

「まだ明るいのに物騒ね」

会話が途切れた。

「……なんであんなことしたの?」

急に話題を変えたけれど、アディは正確に意味を理解したようだ。びくりと肩を震わせた。

「私、初めてだったんだけど」

「……俺も初めてだった」

「嘘」

いつも令嬢たちと楽しそうにやっていたのに。べルティーナと抱き合っていたのに。

だけどアディは大げさなくらい反応して否定した。
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