極秘新婚~独占欲強めの御曹司と突然夫婦になりました~
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昨日は最悪だった。
希樹を迎えに行き、羅良の了解を取ってからちゃんと話をするはずが、まさかの両親にすべてをぶち壊しにされた。
真実を話すのが遅すぎた? だって、仕方ないだろう。
三階から飛び降りようかと思わせるくらい悩んでいた羅良の問題を、俺が勝手に明るみに出すわけにはいかないじゃないか。
帰り道、母がわあわあと大声で喚いていたが、俺はそれを全てシャットアウトし、返事をしなかった。
それが余計に彼女のヒステリーに火を点けたようだが、知ったことではない。いくら親でも、俺の大事な人たちを傷つけたことは、絶対に許さない。
「副社長、私たちはこれで……」
秘書室から長瀬さんがやってきて、挨拶をする。
時計を見ると、もう定時を迎えていた。
「ああ、申し訳ない。俺も帰るから、君たちもあがってくれ」
「はい。失礼します」
長瀬さんは表情ひとつ変えず、部屋を出ていく。
彼女は秘書の鏡だ。仕事中に個人的な感情を露わにすることは、滅多にない。
だけど俺は、ころころと表情を変える女性が好きだった。
高校生の頃、日焼けした少年のようだった希樹。
トラックをのびのびと駆ける彼女の姿を忘れた日は、一日もない。